このエントリーが目的としているのは、未来予想でも、陰謀説の流布でもない。
俺の頭の中で、文字通り「なんとな~く」ピースの形がフィットしたことのまとめみたいなものである。
【その1】
「ダイヤモンド・オンライン」の「山崎元のマルチスコープ」の【第179回】2011年5月4日の記事「
ライブドアと東京電力は何がちがうのか?」を読んだ。
この記事の中で、
株式市場に関わる犯罪の前例を考えると、堀江貴文元ライブドア社長に対する量刑は異例に重い。
ライブドアのケースが「フェア」の範囲内だったかどうかは極めて疑わしい。
一方、世間常識的には、当時の堀江氏の言動は、既存の世間に対していかにも挑発的で、小さな過誤であっても、弱点があれば徹底的に叩かれておかしくなかったとは言える。と述べられている。
この点、彼はいささか世間を甘く見すぎたのかも知れないし、日本の社会を信用しすぎたのかも知れない。
そして最後には、
結局のところはっきりした理由は分からないが、社会観察としては、ライブドアのような新興企業、あるいは当時の堀江貴文氏のような短期間での成功者と、東京電力のような古い名門企業のメンバーとの間には、暗黙の会員システムの会員(=東電)と非会員(ライブドア、堀江氏)のような扱いの差があるのではないか。と述べられている。
実を言うと、ライブドアの一件については、俺も授業料を払ったクチである。
(もっとも、ポケットマネーのレベルだが)
株主にはIRレポートが送られて来るので、(当時の)事業内容とその推移を知らされている。
当時、大阪球場でホリエモンコールを叫んでいた若い衆よりも、俺は当事者だったのだ。
俺は常々思うのだが、IT関連のビジネスは錬金術化し易いと考えている。
つまり、
- 無から有を生み出すことが可能(まさに錬金術)
- ”持つ者”が不利となり、”持たざる者”が有利となる
- 早いもの勝ち、やったもん勝ち(デファクト・スタンダード)
「無から有を生み出すことが可能」と書いたが、正確には、無と思われていた物、もしくは実体を持たない物に価値を与えることが可能と言う意味になる。
つまり、時間、空間、速度(スピード)、品質(クォリティ)の「違い」に付加価値を与えることである。
「そんなのサービス業の基本」と言われればそれまでだが、これらのサービスを提供するのが人間に依存したビジネスでは、人件費抑制のためのローコスト・オペレーションが最大のポイントとなる。
言うまでもなく、IT関連ビジネスではサービス提供の主体は、究極的にはハードウェアとなる。
しかもWeb2.0論で言われていた「チープ革命」により、高速・大容量なハードウェアの価格は下がる一方である。
しかし、IT関連ビジネスおいて人的要素を排除することが収益を上げるポイントではない。
今まで何も存在しないところに需要と供給を作り出すことで新たな「市場」が生まれる。
そしてその「市場」をコントロールする力を独占することで大きな収益が得られる。
これは、IT関連企業が新規サービスの「立ち上げ」と「拡大」に最大限のリソースを注ぎ込む理由である。
また、IT関連企業は特別な設備投資を必要とせず、小さな規模でビジネスをスタートさせることが可能であり、もしダメだったら、ユーザーにごめんなさいして、サービスをたたむことが「許されてしまう」のである。
さて、上記の記事を読んで、俺には最後の「暗黙の会員システム」のところが印象的だった。
【その2】
「動画サイトに映画を無許可投稿、警視庁が初摘発」(日経新聞 5/24)と言うニュースがあった。
ネット上では「ニコ厨ざまぁ」「いいぞ、どんどん逮捕しろ」「ニコ動も取り締まれ」などの意見が見られた。
この記事やテレビ報道をどう見るか。
これはニコニコ動画に対するキャンペーンのひとつではないか、と俺は思う。
今後、著作権に触れる動画については、うp主が自ら削除するのではないだろうか。
これにより、ニコ動へのアクセス数が減少することは避けられないだろう。
俺は、最近ニコ動が”ちょーしこいてんなぁ”と感じることが増えたように思う。
最初に目に付いたのはテレビCMだった。
深夜アニメ枠以外では見たことはないが「ほぉ、ニコ動も番組スポンサーやるほどになったんだ」と思ったものだ。
次に気が付いたのはテレビCMの内容だった。
コンサートやミュージカルを主催すると言うものだったが、従来のチケットに相当する「リアルチケット」と、それとは別に「ネットチケット」を用意すると言うことだった。
これはチケットのネット通販のことではなくて、上演されるライブのネット中継を自宅のPCで視聴するためのチケットのことである。
これにより、興行の主催者は演目に必要な「時間」と「空間」の拡大に成功したのである。
そして、新たに拡大した「時間」と「空間」に値段を付けてサービスを提供したのである。
当初は「うまいこと考えたなぁ」と思った。
先にわざわざ「興行」と書いたが「従来の興行ビジネスの関係者(ステークホルダー)たちには、面白くない話しだろうなぁ」とも思った。
一般人の俺でも思いつく利害関係者たち
- 一生懸命に設備投資したチケット販売業者
- ライブ会場での物販収益に関連する人たち
- パッケージ化(CD、DVD、書籍)の収益に関連する人たち
- 一次使用、二次使用コンテンツを各種メディアに広告・宣伝する人たち
そして、最近ではアニメ上映会などを「公式」チャンネルにて、有料/無料で実施している。
もちろん、時間と空間とクォリティに優れている方式は有償である。
上記のコンサートやミュージカルは、コンテンツ的には微妙であった。
どちらかと言うと、マイノリティの、マイノリティによる、マイノリティのためのコンテンツであった。
当時「な~んで、こんなしょぼいことやるかなぁ」と思っていたが、今にして思えば、メジャーなコンテンツを扱う際の実験(マーケティング)だったのではないだろうか。
技術的な課題の検討もあるだろうが、どれだけの人がお金を払って見てくれるだろうかと言う、文字通りのマーケティングリサーチだったのだろう。
このアニメ上映会は単なるアニメコンテンツのネット配信ではない。
ニコ動お得意のコメント共有機能によって、単なる視聴者から観客(になったような気)になるのである。
実際には存在しない空間を共有した気になるのである。
もしニコ動が空気を読んでいて、ライブドアの二の舞にはならないと考えていたら、上記のステークホルダーたち(既得権を持つ人たち)に少しずつでもお金を落としていることだろう。(保険だな)
ただ、メジャーなアニメコンテンツを使ってのビジネスは、ステークホルダーたちには面白くないのかもしれない。
「これ以上、おいしい事になる前にお灸を据えておこう」と言うのが、今回の逮捕劇に見る俺の考えだ。
【総論】
今回の逮捕劇は、従来のP2Pがらみの著作権侵害とは違う感じがした。
お昼のニュースにて、凶悪犯並みの扱いである。
これにより、
- 犯した罪に対する(社会的)制裁がキツい
- どちらもホリエモンが登場する
俺には、著作権侵害のためと言う理由の向こう側に、ニコ動に対する「何か」が見えた気がした。
今後、ニコ動に対する「追い込み」はキツくなって行くのだろうか?
あるいは。。。
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